2010年、安全飲料水法(SDWA)の下で、環境保護庁(EPA)は、第1飲料水規則の見直し、現行のヒ素規則の検討、過塩素酸塩規制の必要性の再検討を実施し、またこれら規則の新執行システムに慣れることに努める。
(1) 新規制執行システム
2010年の元日に始まったこのシステムの要点は、EPAの施行・法令遵守保証局が2009年12月に発表したメモや同局のCynthia Giles局長の2009年12月の上院委員会での公聴会でのコメントによれば、次の通り。
- 対象を主に指定された期間内にあったSDWAに基づくすべての規則に対する違反の合計がもっとも多い上水道事業者にしぼる。
- 違反が財政的に苦しい事業者にもっとも多く起こっており、またSDWAでは飲料水の規制については州政府の方が優位にあるので、EPAは州政府の規制担当者と協力して、このような事業者を支援して規制を遵守してもらえるようにする。
(2) 第1飲料水規則の6年毎の見直し
2010年でもっとも重要な規制措置は、SDWAによって求められている第1飲料水規則の6年毎の見直しである。
EPAは、今回71の規則を見直しているが、そのなかで全大腸菌群規則の改定が注目されており、2010年中にその改定案が発表される予定である。
この規則の見直しは、この規則をめぐって後で起こる論争を避けるために利害関係者が合意したプロセスによって行なわれている。
合意では、大腸菌群のモニタリングと報告の要件を厳しくし、是正措置を義務付けることが提案されている。
(3) 現行のヒ素規則の検討
EPAは、現在のヒ素規則が、健康上のリスク、水に含まれるヒ素を検出するための技術、利用できる処理技術が適したものであるかなどということを十分に考慮して作成されているかどうかということについて調べている。現時点では、2010年中に規則案が発表されるかどうかは不明である。
同庁は2001年に飲料水に含まれるヒ素の最大汚染濃度を50 ppbから10 ppbに下げた。このとき、3 ppbに下げることも検討したが、処理などの費用が10 ppbの場合より4倍かかるという分析結果があったため10 ppbが採用された。しかし、必ずしもこれが正しくなかったという意見もあるので、最近の改善された技術を踏まえて検討する必要がある。
(4) 過塩素酸塩規制の必要性の再検討
EPAは2008年に、過塩素酸塩の連邦政府の規則を作成しても達成できることが少なすぎると判断したが、ずっとこの物質の規制を求め続けてきたBarbara Boxer上院議員(カリフォルニア州選出)が2009年12月の上院環境公共事業委員会でPeter Silva水担当副長官に再検討を強く求めたことなどから、同庁は、2010年の中ごろに再び過塩素酸塩を規制すべきかどうかを決定することにしている。
EPAはこのほかに、水道管に使われてきた鉛と銅による汚染の報告要件を変更する規則の改定、石油や天然ガスの生産時に行なわれる水圧破砕の飲料水に与える影響、2008年に発表した二酸化炭素の地下貯蔵サイトへの注入による炭素隔離に関する規則案を2010年あるいは2011年に最終規則にするための検討などを行う予定である。