米国環境保護庁(EPA)は2011年、Keeping Raw Sewage and Contaminated Stormwater Out of the Public’s Water(生下水や汚染されたストームウォーター(雨水など流出源を特定できない流出水)が公共の水域に入らないようにする)という報告書を発表した。
その概要を以下に示す。
米国の多くの市町村では、下水の収集に分流式下水道が使われているが、主として古くからある都市では、初期の下水道インフラの遺物とも言える合流式下水道(以下では、CSS(combined sewer system)と呼ぶ)も使われている。ほとんどのCSSのある市町村は、米国の北東部、五大湖周辺地域、そして太平洋岸北西部にある。
CSSにおいても、通常は下水のすべては下水処理場に運ばれて、そこで処理されて、水域に排出されている。
しかしながら、大雨時や多量の雪解け水が出る時期には、下水道を流れる下水の量が下水道や処理場の容量を超えることが起こる。そういうわけで、CSSは、時折あふれて下水道の容量を超えた下水を直接近くにある河川や湖などに排出するよう設計されている。このようにしてあふれた水は、合流式下水道越流水(CSO)と呼ばれ、ストームウォーターだけでなく、たとえば、未処理の人や産業の廃棄物、毒性物質、破片などの汚染物質も含んでいる。ストームウォーターにも、雨が道路や田畑を横切って流れるときに取り込んだ油分、油脂、毒性物質などの汚染物質が含まれている。
CSOに含まれる汚染物質などは、降雨時にその地域の水域に直接排出されるので、その水が水質基準を超す可能性がある。そして、人の健康にリスクをもたらし、水生生物の生息地や水生生物自体を脅かし、米国の水路の使用や人々の水域での娯楽を損なうことになる。
水質浄化法(CWA)の下で、許可がなければ、CSSからの排出は禁止されている。米国議会は2000年12月、地方自治体のCSSからの排出のために発給される一つ一つの許可は、国のCSOに関する政策に従わなければならないと記載した条文を加えてCWAを改定した。この政策は、地方政府、許可機関、水質基準を定める事業体、そして一般の人々が、究極的には健康や環境の基準を満たすCSOの抑制を達成するための包括的で協調的な計画の策定にたずさわることを確実にするための総合的な国家戦略である。
この戦略には次の3つの基本方針がある。
- CSOが起こった場合、それが確実に雨天の結果以外の理由で起こっていないようにする。
- 雨天の結果起こったCSOのすべての排出地点についてCWAの技術と水質に基づく要件を遵守させる。
- CSOの水質への影響をできるだけ小さくする。
CSO許可の所持者は、正確にCSSとCSOの排出の特徴を明らかにし、基本方針のなかで特定されている最低限の技術に基づく抑制策を実施していることを示すプロセスに即刻着手するよう求められる。
最低限の技術に基づくCSOの抑制策には、たとえば、CSSとCSOの適切な運用と定期的な保守プログラムの実施、収集システムのできる限りの貯水用としての使用、公共処理場におけるできるだけ多くの水処理の実施、乾期におけるCSOの発生の阻止、などが挙げられている。
EPAの第2支局が担当するニューヨーク州、ニュージャージー州、プエルトリコの一部にある下水道の多くでもCSSが用いられている。そこで、この報告書は、これら地域の下水道で実施されているCSOについて問題点があることを示し、さらなる対応策を求めている。