ペルー大統領、水資源の利用と確保を権利として認めるための憲法改正を提案

ペルーのウマラ大統領は2012年7月28日の独立記念日の国会演説で、水資源の利用と確保を基本的権利と認める為の憲法改正案を提案した。ペルーでは2011年末から、米国ニューモント社が投資するヤナコチャ社によるカハマルカ州の新規金鉱山開発プロジェクト「コンガ」に反対する、地元住民を中心とした抗議が続いている。2012年7月初めには、抗議団体と警察の衝突が激化して4名が死亡、25名が負傷する事態となり、非常事態宣言下におかれた。コンガプロジェクトは、2010年10月に環境アセスメントがエネルギー・鉱山省に承認され、国内の鉱山投資では最大規模となる48億ドルの投資を予定しているが、プロジェクト敷地内にある4つの湖の水資源が争点となっている。

金鉱脈はこれらの湖の真下にある為、プロジェクトではこのうちの2つの湖の水を抜いて鉱石を採掘し、残りの2つの湖についても水を抜き、採掘土の堆積場とする計画である。この4つの湖の水量の倍の容量の貯水池を新たに建設することになっているが、州全体への水系への影響や採掘活動に伴う水源汚染が問題視され、抗議運動が続いているものである。大統領演説では、ペルーにおける社会紛争の74%が環境問題に関連するものである現状を鑑み、自然資源、とりわけ水資源の、平等かつ責任をもった利用を推進する為の法的枠組みの整備が重要課題である点が強調され、コンガプロジェクト問題には直接触れていないものの、国民の水資源の確保を重要視する姿勢が表明された。

ペルーは、先住民の権利を定めた国際労働機関ILO条約第169号を1994年2月に批准しているが、ILOは2010年3月、ペルー政府に対し、先住民に影響を及ぼす資源の探査や開発を停止すべきとの見解を示している。その理由として、鉱物資源や炭化水素資源の探鉱を目的とした公聴会が、プロジェクトに関する単なる情報提供を目的としたものであり、先住民社会・文化に適した事前協議となっていない点や、鉱業権が与えられた後に市民参加が開始されている点が挙げられた。

これを受け2011年5月、鉱区申請の対象地域に先住民コミュニティが存在する場合は、政府が先住民コミュニティの了解を得ることを鉱区付与の条件とする政令 No.023-2011-EMが公布された。また、2011年9月に先住民事前協議法No.29785が、2012年4月には同法施行細則が公布された。資源に価値を与え、先住民の権利を尊重して生活水準の向上を図るための、国土利用に関する法規も策定中である。こうした法的枠組み内で、然るべき環境ライセンスを有し、先住民や地元住民とのコンセンサスに基づく鉱山資源開発プロジェクトの実施は不可能ではないと、大統領は主張した。

大統領演説内容は、以下のサイトで参照可能(スペイン語)。
http://www.presidencia.gob.pe/mensaje-a-la-nacion-del-senor-presidente-de-la-republica-ollanta-humala-tasso-con-motivo-del-191d-aniversario-de-la-independencia-nacional

タグ「」の記事:

2020年7月10日
台湾環境保護署、「水汚染防止法事業分類および定義」の改正を公告――オイル貯蔵場や貯蔵施設の分類・定義を改める
2020年7月9日
米EPA、飲料水中の過塩素酸塩を規制しない方針を最終決定
2020年7月8日
ベトナム、水資源開発や排水の許可承認に関する手数料を暫定的に減額する通達を制定
2020年7月7日
ベトナム、水資源分野の違反に対する罰則を定める政令を制定
2020年7月6日
中国標準化研究院、「汚水処理装置一式」など3本の国家標準の意見募集稿を公表し意見募集