カナダでおもに法律的な観点から環境問題に取り組んでいるNPO、Ecojusticeが、同国の飲料水基準を主要先進国のそれと比較して示した調査報告書、Waterproof: Standardsを2014年7月16日に公表した。この報告書でEcojusticeは、カナダの飲料水基準が他の先進諸国と比較して大幅に遅れていることを指摘している。
報告書は、カナダで安全とされる飲料水中の汚染物質の最大濃度を示す「飲料水水質ガイドライン」について、米国、EU、オーストラリアの水質基準、それに世界保健機関(WHO)が推奨する基準と比較対照しつつ検討をおこない、その結果を以下のようにまとめている。
- 24物質については、カナダの水質基準が最も厳しいか、または他国の最も厳しい基準と同等である。
- 46物質については、カナダには水質基準があるが、比較の対象とした国のうちすくなくとも1国には基準がない。
- 27物質については、カナダの水質基準が最も緩いか、または他国の最も緩い基準と同等である。
- 105物質については、カナダには規制がないが、比較の対象とした国のうちすくなくとも1国には規制がある。
ただちに行動が必要な課題
報告書は、ただちに行動が必要な課題としてつぎの3項目を挙げている。
- 2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)の規制強化:
2,4-Dはひろく使われている除草剤であるが、この物質への長期曝露は神経系、肝臓、および腎臓の障害を引き起こすおそれがあり、また、これはヒト発癌性物質である疑いもある。この物質について、他の先進諸国はカナダの1.5倍ないし3倍ほど厳格な基準を設けている。 - スチレンについての水質基準設定:
スチレンはカナダでポリスチレン、合成ゴム、ラテックスなどの製造に使われているが、ヒト発癌性物質である疑いがあり、また、肝臓、腎臓、および循環器系の障害を引き起こすおそれがある。 - 微生物処理の基準設定:
水中病原体は深刻な健康影響をただちに引き起こすおそれがあるため、汚染化学物質よりも大きな脅威となっている。
なお、Ecojusticeが公表した調査報告書、Waterproof: Standardsは以下のURLで読むことができる。
http://www.ecojustice.ca/publications/waterproof-standards/attachment