ドイツ連邦内閣は2015年9月28日、「水サービスと水利用の費用に関する原則を設定するため水管理法を改正するとともに、排水課徴金法を改正するための法律(水管理法改正法)」案を閣議了解した(以下のリンクに、改正法案の原文掲載)。ドイツでまだ国内法化されていないEU水枠組み指令(2000/60/EU)の一部の規定を国内実施するもの。
http://www.bmub.bund.de/fileadmin/Daten_BMU/Download_PDF/Gesetze/wasserhaushaltsgesetz_aenderung_entwurf_bf.pdf
水管理法改正法案の骨組みは、次の2つからなる。
(1) 水管理法の改正-水質保全のための経済的政策手段の活用
EU水枠組み指令第2条第38号(水サービスの定義)と第39号(水利用の定義)を国内法化するとともに、水サービスと水利用の費用を賄うための同指令第9条の規定を国内実施する。これら規定はまだ、ドイツ連邦法で採用されていない。これら規定は、EU加盟国に対し、水質保全のため経済的政策手段の活用を促すものである。水系環境の損傷や破壊に伴う水系環境・資源保全修復費用など、水利用の費用負担の原則を考慮する際、とりわけ「発生者負担の原則」と水利用の経済的分析に基づく必要がある。
経済的政策手段の活用は、それ以外の手段と並んで、水枠組み指令の目標達成に寄与できる。しかし、EU水枠組み指令では、具体的な経済的・財政的な政策手段を特定していない。一部加盟国がその手段の活用について、欧州市場裁判所に裁定を求めたところ、幅広い裁量の余地が認められたところである。
(2) 排水課徴金法の改正-長期的なモニタリング値の不採用
産業排出物指令(2010/75/EU)に基づき欧州委員会が決定した「BAT結論(conclusions)」をドイツ法に取り入れなければならない。これは差し当たり排水令改正を通じて行う。さまざまな産業部門を対象とした「BAT結論」は、年間平均値や月間平均値のような、より長期的な平均モニタリング値を、“遵守すべき範囲”として導入する傾向にある。この年間平均値や月間平均値は、排水令改正を通じて補完的に導入しなければならない。
一方、ドイツでは、さまざまな産業部門からの排水に対して課徴金を課す独自の排水課徴金制度を実施している。現行の排水課徴金法では、排水課徴金の額を決定する際、サンプル試験か、2時間混合サンプル試験という短時間のモニタリング値を算定根拠にしている。しかし、将来的に長期的なモニタリング値(年間平均値や月間平均値)を算定根拠として採用することになると、課徴金の額が変わるなど大きな影響が出かねない。そこで排水課徴金法を改正し、「年間平均値や月間平均値を対象外にする」とはっきり明記し、長期的なモニタリング値を排水課徴金法では採用しないことにした。なおEUには、ドイツのような排水課徴金制度がないので、EU法違反にはならない。