米国ワシントン州のInslee知事(民主党)は2015年10月8日、新たな水質浄化規則の起草を同州エコロジー局に命じたと発表した。同知事は2014年7月、米国環境保護庁(EPA)が求める水質浄化規則の改正に絡めて身近な有害物質を根源から削減する取組を提案し、2015年1月には水質浄化規則の改正案と有害物質削減法案がそれぞれ提案された。しかし、有害物質削減法案は2015年度のワシントン州議会を通過できず、これを受けたInslee知事は同年7月、規則案を取り下げて再検討するようエコロジー局に指示していた。
同知事は、連邦水質浄化法(CWA)とその規則だけで現在の水質汚染問題を解決できるのかという疑問は依然として残っているとして、エコロジー局に対し、有害な水質汚染化学物質の重要発生源の特定における州保健局との共同アプローチを継続するよう指示している。
州の規則策定に対するコントロールを維持
CWAは州に対し、水質基準の策定とともに、廃水の排出を許可されている企業や自治体が守るべき汚染制限値の管理を義務付けている。この連邦法にもとづき、EPAは、ワシントン州の水質浄化規則を現状に即して改正するよう同州に求めている。
2015年7月にワシントン州が提案していた水質浄化規則の改正案を取り下げたあと、同年9月に、EPAはワシントン州に適用される同庁の規則案を公表した。その際、EPAは、このままワシントン州が規則の改正作業を継続しなければ同庁の規則案が採択されるが、同州が新たな規則案を提出すればEPAの規則の採択に向けたプロセスは中断されると述べていた。今回のInslee知事の命令により、規則策定に対する州のコントロールは維持されることになる。
新たな水質浄化規則にかかわるファクター
新たな水質浄化規則案について、州やEPAをはじめとする利害関係者が合意しているファクターには以下のものがある。
- 人々の健康に関する基準の計算に用いられるさかなの消費率(/日/人)を実情に合わせ、従来の6.5グラム(g)から175gに引き上げる。
- がん危険率は、取り下げられたエコロジー局の規則案で提案されていた10-5ではなく、EPAが好ましいとした10-6を提案する。これは、ある人がワシントン州の水域で捕れたさかなを70年間毎日175gずつ食べた場合、100万分の1の確率でがんになることを意味する。
しかし、Inslee知事は、企業や自治体の規則への適合を確保するうえで大きな効果を生むのは、さかなの消費率やがん危険率以外のファクターだと述べている。たとえば、エコロジー局が取り下げた水質浄化規則の改正案は、PCB、水銀、およびヒ素に特有の性質に対処しており、PCBと水銀については、現行の防護レベルを維持することを提案している。いっぽう、ヒ素の制限値は、連邦の飲料水基準に設定されるとみられている。
また、Inslee知事は、同州の「化学行動計画」(CAP)を利用して、有害な化学物質の発生源を特定するとともに、それらの化学物質がもたらす影響を低減するための対策を提供したいと考えている。CAPは、残留性、生体内蓄積性および毒性物質(PBT)や懸念される金属を対象に、それらの物質の特性、有害性などを評価しながら、州内の人々の健康と環境を保護するための対策を勧告するものである。
エコロジー局はただちに規則案の起草を開始し、2016年早々には、意見公募のため規則案を公表できるようにしたいとしている。