2017年6月21日、メキシコ上院に、環境省と国家水管理庁(CONAGUA)に工業排水基準の見直し作業を継続することを要請する書簡が提出された。書簡では、以下が要請理由として述べられている。
メキシコでは国家の水域に排出される排水に対しては、メキシコ公式規格NOM-001-SEMARNAT-1996(1997年1月6日公布)で、以下のパラメータの最大許容値が規定されている。
基本汚染物質:
油脂、浮遊物質(SS)、沈殿物質、生物化学的酸素要求量(BOD)、全窒素、全リン、温度、pHなど、通常の汚水処理により処理できる汚染物質。
病原性、寄生性汚染物質:
微生物、嚢胞、寄生虫卵など、汚水に含まれている可能性があり、人の健康や動植物に害を及ぼす物質であるが、NOM-001-SEMARNAT-1996では、大腸菌と蠕虫(ぜんちゅう)卵のみがパラメータとして規定されている。
重金属およびシアン:
一定の濃度を超えると人の健康や動植物に害を及ぼす物質で、NOM-001-SEMARNAT-1996では、砒素、カドミウム、銅、クロム、水銀、ニッケル、鉛、亜鉛、シアンの基準値が規定されている。
現在のNOM-001-SEMARNAT-1996では上記の通り、8つの基本汚染物質、8つの重金属、シアン、大腸菌、蠕虫(ぜんちゅう)卵の合計20のパラメータしか基準が設けられていないが、化学物質を含有する工業排水に焦点を当てたパラメータの設定が必要である。現在登録されている10万種以上の合成化合物の中には、低濃度でも毒性を有するものがあり、これらが水域に排出されるのを防止する必要がある。
メキシコでは工業の発達が続いており、NOM-001-SEMARNAT-1996が公布された時点からは進んだ技術も使った生産活動が行われている。本公式規格の基準を順守していたとしても、業種によっては有害物質が水域に排出される可能性もあるため、従来の分析では検出されない毒性分析も含めた基準の設定が必要である。例えば、サンチアゴ川でメキシコ水技術庁(IMTA)が2011年に実施した検査では、フタル酸、トルエン、クロロフォルム、ベンゼン、フェノールなどの揮発性有機化合物や半揮発性有機化合物が1090種検出されている。
なお、NOM-001-SEMARNAT-1996の改正は2007年から規格策定計画に盛り込まれているが、未だに改正に至っていない。
要請書は、以下のURLより参照可(スペイン語表記)。
http://www.senado.gob.mx/index.php?ver=cp&mn=4&id=72402