米環境保護庁(EPA)は2019年9月12日、同庁と陸軍工兵司令部が「合衆国の水域」を定義する「2015年規則」を廃止し、連邦行政規則集(CFR)の関連する文言を2015年規則の制定以前のテキストに戻す最終規則を決定したことを公表した。この最終規則は2019年9月23日時点で、まだ官報掲載による公布はなされていない。
2015年規則について
水質浄化法(CWA)では、この法律の規制がおよぶ範囲を「可航水域」ということばであらわしている。これは、CWAがもともと、河川港湾法などの航路関係の法律を補完するものとして制定されたことに由来する。しかし、実際にはCWAは航行可能な水域、すなわち可航水域ばかりでなく、上流河川、湖沼、湿地帯なども規制対象に含めるものとして運用されており、CWAの条文にもそれらへの言及がある。そこで、オバマ政権時代の2015年、CWAの規制対象となる水域を「合衆国の水域」として定義しなおす規則が制定された。これが「合衆国の水域」を定義する「2015年規則」である。
2015年規則廃止の理由
EPAと陸軍工兵司令部は、2015年規則を廃止する理由として以下の4つを挙げている。
- 2015年規則はCWAのもとでのEPAと陸軍工兵司令部の権限の範囲の法的限定をおこなっておらず、これは議会および裁判所の意図したところではない。
- 2015年規則の制定にあたって、水質汚染防止等に関する州の責任と権利がじゅうぶんに尊重されなかった。
- 2015年規則による定義では憲法と法律の権限の範囲を狭めるような解釈が生じるおそれがある。
- 2015年規則には手続き上の誤りがあるほか、じゅうぶんな記録の裏付けがない。
次のステップ
今回の2015年規則の廃止は、かねてからEPAと陸軍工兵司令部が意図していた2段階のプロセスの第1ステップにあたるもので、今後、第2ステップとして、「合衆国の水域」を新たに定義しなおす規則を制定することになる。そのための規則案の公表と意見募集はすでに2018年12月におこなわれている。
なお、この最終規則の官報掲載前のテキストは以下のURLで読むことができる。
https://www.epa.gov/sites/production/files/2019-09/documents/wotus_rin-2040-af74_final_frn_prepub2.pdf