2014年9月23日に報じられたところによると、Suez Environnementは子会社のOndeo Systemsを通じ、ニュージーランドを拠点とするDerceto*1(本社:オークランド)の買収手続きを完了した。Dercetoは、飲料水の生産・配水システムにかかるエネルギーコストを削減するソリューションのスペシャリストである。
地方自治体の財政を圧迫する飲料水関連コスト
飲料水に関する規制が強化され、またエネルギーコストが急激に上昇する中、エネルギー消費量の削減は地方自治体の優先課題となっている。この課題に対応し、Dercetoは飲料水事業者のエネルギーコストを最小化するためのソリューションを開発してきた。地方自治体の水道局にとって、飲料水の生産と配水は極めて大きなエネルギーを消費する項目となっており、合計の支出のうち40%をエネルギー関連コストが占め、このエネルギー関連支出のうち、ポンプ(揚水)関連の支出が最大で80%を占める状況となっている。
データをリアルタイムで分析、今後24–48時間分の水需要を予測
Dercetoのソリーション(Aquadapt)は、飲用水提供事業者のモニタリング・制御システムに接続されると、リアルタイムで電力料金にアクセスするとともに、飲用水需要の見込みを更新する。その後、この見込みを使用して、今後24-48時間分の最適な揚水戦略を立てる。この戦略は30分ごとに更新され、飲用水の供給において24時間いつでも最高の経済効率を達成することができる。今回の買収に際してSuez社は、このDercetoのソフトウェアを、2014年6月にSuez社が発表した飲用水ネットワークを最適化するソフトウェア、Aquadvanced*2と統合したと発表した。
この買収により、Suez Environnementは飲用水ネットワークのパフォーマンス最適化に関し、より包括的なソリーションを提供することが可能となり、ひいては地方自治体の持続可能なリソース管理をより手厚くサポートすることができるとしている。この買収は新たなサービスを創出するというSuez社の4大優先課題のひとつに沿ったものであり、同社ではこの買収を通じて、国際的なプレゼンス強化を図る。同グループではこの市場における年間の収益が平均で10%以上増加すると見込んでいる。
EnviXコメント
2014年初めにSuez Environnementは「工業用水」分野および「スマート・ウォーター」分野にて企業買収を進めていくことを公表したが、今回の買収はその方針のひとつであると考えられる。2014年6月のProcess Groupの買収*3、2014年7月のEvathermの株式の取得*4(いずれも工業用水分野でのソリューションを専門とする企業)につづくものであり、企業買収を行うことですでに有する自社技術および地理的な事業範囲の補完を狙っている。
先進国での水道インフラの老朽化や途上国での無収水問題などに加え、世界各地で水不足がますます逼迫するなか、スマート・ウォーター関連市場は確実に拡大すると言われている。同分野では、IBMなどの世界的な巨大企業も着実に実績を上げており、また、TaKaDuなどの新興企業も地歩を固めつつある。Suez社はこれまではあまり目立った事業展開を見せてこなかったが、今後の動向には注目する必要があるだろう。
*1 従業員数約20人。同社の飲料水システムの最適化ソリューション(Aquadapt)は、電気料金の10–20%の削減につながるとして、現在米国、英国、カナダ、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの13の水道事業者(16のシステム)に採用されている。米国の他、カナダ、英国にも拠点を置く。
*2 飲料水配水システムの流量、水圧、量をリアルタイムに最適化するセンサベースのシステム。飲料水用に開発されたが現在はエネルギーのマネジメントにも使用されている。
*3 EWBJ51号に関連記事有り「Suez Environnement、石油・ガス市場への戦略的展開を視野にProcess Groupを買収」
*4 EWBJ51号に関連記事有り「Suez Environnement、蒸発技術および結晶化技術に特化したEvathermの株式を取得――産業顧客向け水処理ソリューションのさらなる充実化を図る」