メキシコ下院は2015年3月9日、翌日に行われる予定だった、水一般法案の審議を無期延期すると発表した。法案は、以下を骨子とするものとなっている。
- 十分な量で質の良い水へのアクセス権を法的に定義する。
- 国家水情報システムを立ち上げ、水資源やインフラ、サービスに関する情報へのアクセス権を確保する。
- 上下水サービスを管理する国家機関を創設する。
- 家庭用や公共の水利用を優先する。
- 水資源の開発や利用権を民間企業にコンセッションで供与する。
- 家庭用の水利用の場合は、コンセッション手続きを除外する。
- 水資源の汚染状況を速やかに公開し、安全な飲料水を確保する。
- 洪水や旱魃など水に関わる災害の予防措置をとり、リスクを軽減する。
- 法の目的を達成するための資金を調達すること。
- 水の供給に直接影響を与える違反行為に対しては、重度の罰則処置を与える。
この延期は、本法案がエネルギー部門を民間に開放するエネルー法改革と同じで、水資源を民営化するものであると警告するメキシコ国立大学や水の権 利に関するNGO団体の抗議に応えるものである。抗議団体からは、例えば、ある水域から別の水域への水資源の移動を可能とする条項は、シェールガス開発に おけるフラッキングを奨励するものであり、環境面の不均衡を招くだけでなく、住民ではなく産業向けの水確保となる点や、鉱物資源開発において排水の質の規 制は規定されるが、開発に使用する水の量や条件の規制がない点、また、上下水サービスへの民間投資を誘致することで投資回収を保証するための水道料金見直 しが懸念される点が、指摘されている。
このような批判を受け下院は、法案の正しい内容や意図を説明し、一般市民の疑問が 晴れるまで、同法案の審議を無期延期することを決定した。反対団体は、審議に透明性を持たせるため、審議の一般公開を求めており、これを要請する署名が、 インターネットによるものだけで6日で1万2000人分集まり、国家資源である水のアクセス権の確保に対する一般市民の関心が強いと表明している。
なお、メキシコでは2012年の憲法改正で、国民の水へのアクセス権は保証されている。