マレーシア、地下水を新たな水源として検討を進める

2017年3月25日に現地で報じられたところによると、水不足に悩むマレーシアで新たな水源として地下水が検討されていることが明らかになった。これは同国のAhmad Zahid Hamidi副首相が明らかにしたものである。この構想は、同国には地下水が3兆m3存在するにも関わらず、現在国内水需要の1.5%にしか使用されていないことから発案されたという。同国における水道水の原水の内訳は下図の通りで、8割以上が表層水となっている。

 図 マレーシアおける水道水の原水の内訳
(出典:マレーシア国家水道委員会(SPAN)のデータ[1]よりエンヴィックス作成)

政府主催によるWorld Water Day 2017の記念イベントにおいて、Zahid副首相は次のようにコメントした。「わが国は多くの水源に恵まれ、年間降水量は9070億m3に及びます。これは桁外れとも言える降水量です。しかし、わが国は十分な水を確保できていません。豊富な水資源を持つ国が水不足に陥るということは本来起こり得ないことです。これは我々が水の資源を適切に管理できていない証左です。国家水資源委員会の委員長として私は、マレー半島にも、サバ・サワラク地域にも、水不足に陥っている州があることに驚きました。これは大きな挑戦なのです」

さらに同副首相は、水不足を防ぐために水を効率的に管理することは、連邦政府と州政府双方における全ての当事者の責任であると述べた。「ソマリアを例に挙げます。同国では干ばつによる死者が1日あたり250名に上っています。マレーシアは食料とその他の救助をすることができますが、それは一時的なものに過ぎません。我々は同国で地下150mの深さから農業用水に使用するための地下水を汲み上げる支援を行っています。これは技術を通じた我々の支援です。外国に対して支援ができるわが国が、水を自ら適切に管理する能力を持っていることは明らかなのです。」水管理に成功した例として、Zahid副首相はネグリ・センビラン州の水管理システムを挙げた。Mohamad Hasan州知事が率いるこのシステムは、同州内の水を適切に管理できており、他の州のように水不足に陥っていないと指摘した。

副首相はさらに、国家下水道サービスを運営していく上での重要なフォーカスとして、以下の3点を挙げた。

  • 環境負荷の低い新技術を採用することにより、下水道サービスを近代化する
  • 地方・農村地域(クランバレー外の主要な市町村を含む)における下水サービスの普及範囲を拡大する
  • 小規模・不経済な下水処理施設を合理化し、下水の環境に対する悪影響を低減する。あわせて、「廃棄物から富へ(”waste-to-wealth”)」の商業化の取組みを進める。

 

新たな水管理法案提出へ

一方、同じイベントにおいて天然資源環境省のWan Junaidi Tuanku Jaafar大臣は、同省が今後マレーシアにおける新たな水管理法案を作成すると発表した。この法案の目的は現在独自の水管理システムを運用している各州にテンプレートとしてのシステムを示すことであるという。大臣によれば、この法案は2017年9月にも内閣に提出される見通しであるという。「現在、いくつかの州では無収水の割合が40%にも上り(下図)、これが損失をもたらしています。我々は今後、新たな法案と合わせて、(連邦と州が)共同で運営していく水管理システムを調整する委員会を設置することとしています。」Wan Junaidi大臣はこの新たな法案・制度については州政府と対話を続け、フィードバックを受けていくとの方針を示した。なお、こうした対話の中で大臣は、新たに構築される水管理制度は連邦と州が共同で運営していくものであり、州の水管理を引き受けるものではないと強調していくという。

図 マレーシアの各州での2015年における無収水率(NRW)(%)
(出典:SPANのデータ[2]よりエンヴィックス作成)

[1] http://www.span.gov.my/pdf/annualreport/Annual-Report-2015.pdf

[2] http://www.span.gov.my/index.php/en/statistic/water-statistic/non-revenue-water-nrw-2016

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