EU都市廃水処理指令実施報告書が発表され新旧加盟国の大きな開きが改めて明らかに

2013年8月7日、欧州委員会がほぼ2年おきに欧州議会に提出している「都市廃水処理指令実施報告書(Report on the Implementation of the Urban Waste Water Treatment Directive)」の第7回報告書(以下、7th Implementation Report)を発表した*1

「都市廃水処理指令(91/271/EEC)」*2は、1991年5月にEU閣僚理事会で採択されたもので、EUの加盟国に対して都市廃水を収集するシステムを設け、収集した廃水に対して適切な二次処理を施し、汚染物質を取り除くことを求めている。また、水浴場や水道水源など、管理に慎重を要するエリアに流れ込む廃水については、より厳密な処理を行うことも求めている。

7th Implementation Reportでは、初めて(クロアチアを除く)27加盟国の人口が2000人を超える2万4000の市や町がほぼ網羅されている点が新しい。それで、はっきりと見えてきたのが、やはり15の原加盟国(EU-15)とその他の国々(EU-12)との間に指令遵守率に大きな開きがある点。報告書では、指令第3条に規定されている「廃水収集」、第4条に規定されている「廃水の二次処理」、第5条に規定されている「より厳密な廃水処理」の3項目に分けて加盟国の指令遵守率をパーセントで表し、棒グラフにして紹介しているが、その結果、以下のような点がわかったと報告書は伝えている。

  • オランダ、ドイツ、オーストリアといった原加盟国では廃水の収集施設の整備率が100パーセントに達しているが、キプロス、ラトビア、ブルガリア、エストニア、スロベニアといった国々はまだ30パーセントにも達していない。
  • 二次処理の実施率も、全体では82パーセントで、前回調査時より上昇しているが、EU-15が90~100パーセントなのに対して、EU-12は平均39パーセントである。
  • 富栄養化や人体の健康に影響を及ぼす細菌汚染を防止するためのより厳密な処理の実施率となると、平均は77パーセントに達していても、この差はさらに広がり、EU-12は14パーセントにしか達していない。

なお、指令採択後20年がたつのに加盟27カ国の首都のうち指令が遵守されている都市が11しかないことも明らかにされており、EU-12のほうでも、2007~2013年の総額143億ユーロ(約1兆8600億円)にのぼるEUの投資の結果、廃水の収集率や処理率が全体として改善されている点は付記されている。

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図 EU加盟国の都市廃水処理指令(91/271/EEC)の達成状況(%)
出典:7th Implementation Report、Figure 2

*1 2009年と2010年のEU加盟27カ国における指令の実施状況をまとめたもので、当然、2013年7月に新たにEUに加盟したクロアチアは対象外。以下のURLより閲覧可。
http://ec.europa.eu/environment/water/water-urbanwaste/implementation/implementationreports_en.htm
*2 http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CELEX:31991L0271:EN:NOT

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