水圧破砕廃水からリチウムを取り出す新技術――テキサス大などの研究チームが開発

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モバイル機器や電気自動車が発展をつづけるなか、リチウムの需要が世界的に急増し、採掘やリサイクルによる生産のペースをすでに上回っている。しかし、テキサス大学オースティン校のBenny Freeman教授を中心とする研究チームが、この問題への答をみつけたかもしれない。テキサス大学Cockrell工学スクールMcKetta化学工学科のFreeman教授と、オーストラリアのモナシュ大学化学工学科および連邦科学産業研究機構(CSIRO)の共同研究者らは、水からリチウムなどの金属や鉱物を取り出す効率的な新技法を開発した[1]

シェール・ガス採掘の廃液に高濃度のリチウム

この研究チームが開発した新技法には、生物の細胞膜と同様の濾過機能、すなわち「イオン選択性」をもつ金属・有機構造体(MOF)膜が使われている。この膜を使うと、金属イオンを容易にしかも効率よく分離することが可能になり、水処理業界や鉱業に革命的な技術革新の扉がひらく。これは、ひいてはテキサス州の経済成長につながるものと期待されている。テキサス州でシェール・ガスを産出するバーネット頁岩層とイーグルフォード頁岩層には大量のリチウムが含まれており、水圧破砕で発生する油汚濁水のリチウム濃度はかなり高い。これまで捨てられてきたこの油汚濁水を、Freeman教授らの研究チームの膜フィルターを使って処理すれば、そこからリチウムを取り出して他の産業に役立てることができる。Freeman教授はこう述べている。「シェール・ガス田で発生する油汚濁水にはリチウムが多く含まれている。われわれが開発したような先進的な分離技法を使えば、廃液を資源に変えるチャンスが生まれる可能性がある」

バーネットとイーグルフォードのシェール・ガス田では、ガス井1本あたり毎週30万ガロンの油汚濁水が発生する。Freeman教授らの研究チームは、開発した新技法を使えば、1週間分の油汚濁水から、控え目に見積もっても電気自動車200台分、あるいはスマートフォン160万台分に必要なリチウムを回収できるとしている。

淡水化への応用も

リチウム回収のほかに、Freeman教授らの新技法は淡水化にも応用することができる。現在、世界の淡水化造水量の半分以上が逆浸透膜によるものだが、Freeman教授らの新たな膜技術は従来の逆浸透膜のようにすべてのイオンを無差別に取り除くのではなく、選択的に一部のイオンのみを取り除くことが可能で、従来の方法よりも消費エネルギーが少なくてすむ

細胞膜をヒントに開発されたMOF膜

Freeman教授らの膜材料は、きわめて効率のよい生物の細胞膜をヒントに開発されたものである。細胞膜の動作メカニズムはかつてロデリック・マキノンとピーター・アグレによって解明され、ふたりはこれで2003年のノーベル化学賞を受賞している。共同研究者のひとりであるCSIROのAnita Hillチーフ・サイエンティストはこう述べている。「持続可能な水の濾過に金属・有機構造体(MOF)を使う見通しが立ったのは、公共の利益という観点から見て信じられないくらいすばらしいことだ。リチウム・イオンを取り出すよりよい方法を提供して世界の需要に応えることができれば、それが新たな産業になる可能性がある」

[1] Huacheng Zhang, et al., Ultrafast selective transport of alkali metal ions in metal organic frameworks with subnanometer pores, Science Advances, DOI: 10.1126/sciadv.aaq0066
http://advances.sciencemag.org/content/4/2/eaaq0066.full

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