化学品メーカーKemira、EU都市排水処理指令の改正に向けて規制施行の厳格化等を提言

フィンランド・ヘルシンキに本拠を構える世界的な化学メーカーKemiraは2018年11月19日、EU(欧州共同体)が現在改正を検討している既存の排水処理規制「都市排水処理指令(Urban Waste Water Treatment Directive」を厳格に施行することを、欧州共同体(EU)に対して要請した。現行の指令は、EU加盟国間で施行面のばらつきがあり、環境や住民健康の保護という観点から本来の目的を達成していないと同社は指摘している。そのため、排水処理の改善を図るために、現行指令の改正を通じてEU地域全体に一貫性を持って同指令を施行させる必要性を同社は唱えている。

クリーンな水供給の確保は、将来世界で直面する重要課題の一つである。効率的且つ持続可能な水利用を促進するには、排水処理が重要な役割を担っているものの、現行の欧州規制の多くは1990年代に策定された。さらに、欧州にて現在稼働している排水処理インフラの大部分は十数年前に設計、試運転されたものである。その後飛躍的に技術進歩し、排水処理の効率性は最大20%改善したものの、これらの先端技術の導入が進んでいない状況にある。1991年に制定された排水処理に関する現行の欧州指令「都市排水処理指令」は、EU加盟国への適用(施行)に一貫性がなく、その結果、環境面及び住民の健康面の双方に潜在的リスクを引き起こしている。EU加盟国の中には、同指令要件と比べてより野心的で効率的な排水処理を実施している国があるものの、規制要件が緩い国も見られるなど、加盟国間で大きな差が生じている。

そのため、直ちに加盟国全体で欧州指令要件を完全且つ均等に施行する必要性をKemiraは唱えている。例えば、EU新規加盟国に対しては指令要件の施行に必要となる移行(猶予)期間が他の加盟国と比べて長く設定されており、このような待遇は容認できないという見解を同社は示している。環境保護は、クリーンな水供給へアクセスするために、全てのEU市民に与えられた基本的人権で普遍的なものであり、地理的な場所や加盟国における交渉によって左右されるべきでないと主張している。

またKemiraは、欧州指令のより効率的な施行に加えて、排水処理を改善する先端技術の導入も必要であることを強調している。排水処理の改善に向けて実施すべき既存技術や解決策が既に市場に存在し、比較的実現し易い。その例として、一般家庭や産業施設から放出される未処理の下水や排水が雨天時に河川へ越水する下水道越流水が、主な懸念事項の一つとして挙げられる。結果として河川の汚染をもたらし病原菌や病原体の流布につながる。現時点で、コスト効率良く下水道越流水による感染を安全に阻止する手法が存在しており、同手法の導入をEU全体で義務付けるべきであると、Kemiraは主張している。さらに、現行指令にて規定された異なる汚染物質の制限値は十分ではないことから、生物学的酵素要求量(BOD)、化学的酵素要求量(COD)、総浮遊物質量(TSS)、リンなど、排水に含まれるこれらの特定物質の制限値を厳格化すべきであると、Kemiraは主張している。

EUは現在、2000年に策定された水関連指令「Water Framework Directive」、及び1990年代に制定された関連法規制「Drinking Water Directive」や「Urban Waste Water Treatment Directive」の改正を検討している。これを踏まえて、Kemiraは自社のスタンスや見解を示した意見書を作成した。同意見書では、EU加盟国全体における指令の一貫した適用、排水処理分野における先端技術の利活用の促進、汚染物質の排出制限値の厳格化、新規汚染物質への指令の適用拡大、導入・運用コストの低減につながるイノベーションや持続可能な解決策の公共調達など、多様な現行課題の解決策が含まれている。これらの指令改正に向けたパグリックコメントの募集は既に終了しており、現在その確認作業が実施されている。同指令の改正は20199年に最終化される見通しである。

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