シェールガス開発に伴う水処理市場は2020年までに9倍の90億ドル規模に

シェールガスを採掘するための水圧破砕(フラッキング)に用いられるフラクチャリング流体の水処理市場規模は、2020年までに約9倍の90億ドル規模になることが、米国の調査・コンサルティング会社であるLux Researchの報告書によりわかった。市場の拡大により、水処理や再生水分野での技術革新が促進されるいっぽうで、市場は飽和状態にあり、新規参入者にとって大きなリスクとなっている。

水圧破砕では、ひとつの坑井あたり約4000~2万2000立方メートル以上の水を必要とする。また、海水よりも塩分濃度が6倍以上高く、有毒な高濃度塩水が排出される。同市場の成長に伴い、水処理産業が活性化され、多くのベンチャー企業が難度の高いフローバック(水圧破砕後に地上に戻る水)の処理の分野でしのぎを削っている。Lux Researchの調査アナリストであるBrent Giles氏は次のように語っている。「水圧破砕の生産水およびフローバックに含まれる炭化水素、重金属、スケール防止剤、殺生物剤などの処理は最も高度な処理技術が要求され、最大の課題である。事業機会は多くあるいっぽうで、収益性を見込める位置にいる企業は少ない。我々がコンタクトしたほぼすべてのベンチャー企業が所有する技術如何に関わらず水圧破砕に注目しているが、それらの多くの企業は事業に失敗している」。

同報告書でLux Researchは、企業のパフォーマンス能力を示す「ビジネス遂行力」と、企業が持つ技術の強みと価値を示す「技術の価値」の2つの指標を用い、企業分析を行っている。2つの指標がともに高い値を示せば、“有望”であると評価される。また、それらの指標に企業の発展度合いを示す「成熟度」を加味して、Lux Takeと呼ばれる総合評価を行っている。以下にそれらのいくつかの事例を示す。

  • WaterTectonics:同社の電気凝固技術は、重金属、生体物質、炭化水素を処理することが可能だが、塩分が残される。そのため、同技術の利用は塩分が放出されることによる影響が限定的である場所に限られる。しかし、ハリバートンと長期的な協力関係にあり、“有望”と評価されている。
  • EcoSphere、AquaMost:Ecosphereはオゾン、キャビテーション、電気化学を融合した技術をもつ900万ドル規模の企業であり、“有望”であると評価されている。AquaMostは設立されて間もないベンチャー企業であるが、紫外線触媒を利用した処理技術を持つ。同社は、技術の価値が高いことで“高い潜在性”を持つと評価されている。
  • GasFrac:同社はシェブロンから認可された技術を有しており、フラッキングの際に、高圧の水を使用する替わりに高圧プロパンを用いる。同技術は、シェル、Blackbrush、Husky、そしてシェブロンによって試験的に用いられている。従業員数300名、売上高3億ドル、現金保有高5000万ドルで収益性が高く、数あるベンチャー企業のかなでも群を抜いているとして、“有望”かつLux Takeでは最も評価の高い“非常に良い”に分類されている。

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